No.6「電力事業の抜本的見直し検討」
2012年3月26日 網屋慎哉
1.この課題を取り上げた理由とねらい
東日本大震災によって引き起こされた福島第1原子力発電所の壊滅的事故に伴い、原子力事業からの撤退論が台頭してきている。それに伴い再生可能エネルギーが注目を集めている。こうした状況を踏まえ、電力事業の在り方を検討することとなった。
2.プロジェクトメンバー
赤尾洋二、西森克己、白須英子、安部忠彦、武井敏一、網屋慎哉(リーダー)
3.実施経過
本プロジェクトの具体的な進行は、bTエネルギー・グループと合同で行ってきたので、詳細はそちらに譲る。
4.提案
電力問題についての基本問題は
1 原子力発電事故による原子力事業の見直し
2 電力の自由化 そして公益事業としての在り方への疑問
3 再生可能エネルギー利用に伴う問題
4 以上の問題を消費者の立場から考える
の4点に集約される。
1 原子力発電事故による原子力事業の見直し
今回の事故に配慮して原子力問題を考えるには、前提条件がある。
@ 今回の事故の原因の徹底的解明
例えば政府は原子炉の寿命を40年とする考えを出しているが、一体今回の地震・津波
で原子炉は壊れたのかどうかはっきりしていない。壊れていないのなら、40年とする
理由がわからない。電源喪失が問題というのなら、その対策を徹底すべきであろう。
例えば津波で電源系統が壊滅して、電源車が着いても使えなかったらしい。その防水
対策はどうなっているのだろうか。
A 地震国日本に適した原子力設備の検討
今一度、原子炉本体から、システム全体を見直す必要があるのではないか。
度検討すべきである。
B 放射能廃棄物対策の確立
仮に、脱原発路線をとったとしても、廃棄物対策は必要である。特に原子力発電の輸
出に当たってはバックエンドまでのシステムを提供すべきであろう。そうでなければ
技術輸出など止めるべきである。この前提条件を遅くとも2年以内にはっきりさせる。
当面、安全性の基本を明確にし、その基準にのっとった運転を地域との了解の上続け
ていく。
そして、前提条件が明らかにされたなら、抜本的な対応を行う。
今、福島原発事故の賠償問題などに関連して、東電の在り方が議論されている。
われわれは、将来の脱原発も見越して、原子力事業は、現行の民間会社から切り離 し、原子力公社で運営すべきであろうと考える。
2 電力の自由化 そして公益事業としての在り方への疑問
電力産業については、福島原発事故をきっかけに、その体質的な問題が明らかになって きている。確かに地域独占という立場で、有利な事業展開を進めてきた一面、公益事業 という制約の中での苦労もあったはずである。
公益事業が「公的な性格が強い事業で、日常生活を支えるインフラストラクチュア」であるとすれば、今の電力需要の大半は産業用であり、これが公益事業であった時代は終わったと云える。この分野はユーザーサイドも自家発電を保有する自由もあり、もっと自由化すべき分野といえる。
もし公益事業という形を残すとすれば、それは家庭用を中心とした部分であろう。逆に家庭用を完全に自由化したら、アメリカで見られたような。とんでもないトラブルが起こる可能性は否定できない。
3 再生可能エネルギー利用に伴う問題
再生可能エネルギーによる発電も、電力会社による買い取りが法制化されたが、一方では、その受け入れを拒否することも起こっている。それは今の電力会社が充分な発電設備を持っており、再生可能エネルギー発電からの電気の不安定性を嫌うことから起こっている。そうなると、再生可能エネルギー発電も、今の送電システムにのせるより、ローカル発電として利用する方がいいし、その方が有効に活用される可能性が高い。
4 以上の問題を消費者の立場から考える
こうした電力業界を取り巻く状況を勘案するならば、産業用を中心とした大電力会社(公益事業の大枠を外す)、家庭用を中心としたローカル電力事業(公益事業として運営)に分かれるのが自然である。原子力発電は、今後増発というような展開が難しくなるし、廃棄処理問題も深刻化していく。
そのような状態で今のように電力会社に委ねて運営できるかという問題がある。原発を扱う公社(100%民間企業では難しいだろう)を設立するしかあるまい
5.今後の活動
提案素案に基づき、資料で肉付けして最終報告にまとめ、関係各方面に提案したい。本プ ロジェクトはその時点で終結とするが、エネルギー・電力問題は国の骨幹の問題であり、 常にアンテナをめぐらせ、情報交換を続けたい。特に数か月以内には、福島原発事故の原 因解明も行われるだろうから、その際、改めて原子力についての意見交換を行いたい。